元ヤンキー
携帯の鳴らなさに関して抜群の安定感を誇る僕ですが、
こないだ携帯が鳴り、画面を見てみると知らない番号からの着信。
こうゆう時の男子というものは「誰やろ?可愛い女子かな?」とか淡い期待を抱いてしまうピュアな生き物なわけで、
鳴り止まない鼓動と興奮を抑えつつ、意を決して電話に出ました。
僕「もしもし」
相手「あ、もしもし!久しぶり!」
…
………
男性ホルモンむき出しの声。
ただ、その男らしくて愛嬌のある声を聞いてすぐに誰かわかりました。
その電話は5年以上音信不通だった友達からのものでした。
5年以上前、突然みんなの前から姿を消し、
その後誰も連絡がとれなかったから、誰もその行方を知らず、家族の人に聞いても返事を濁され、
生きてるのかどうかさえもわからなかった友達。
というのも、昔から拳の傷が癒えることがないくらい、いつも喧嘩ばっかしてたヤンチャな奴やったから、
もしかしたらヤバい人と問題起こして何かされたんじゃないかとか、
ヤバい人になってしまったんじゃないかとか、
様々な憶測が飛び交って、みんなが心配してました。
けどそうじゃなかったです。
友達はある事がきっかけで、何年も遠く離れた所にある更生施設に入ってました。
話を聞けば、その施設というのが想像を絶する厳しい環境だったようで、
酒やタバコなどが禁止なのは勿論のこと、まず「自由」というものが一切無く、
施設の外に出れるのは昼間に毎日全員で歩かされる散歩コースと、夜に5分だけ入店が許されるコンビニだけ。
施設の仲間が次々に脱走していく中、「ここで逃げたら何も変わらない」と歯をくいしばって耐えたそう。
社会奉仕の一環としてビデオショップでアルバイトしても、 仕事を教わる上司はまだ10代の若者。
そんな若者に「まだ仕事終わってないんか!」と理不尽な怒られ方をすることもあったらしく、
昔の友達やったら間違いなくその上司を殴って辞めてたと思う。
けど友達は違いました。
誰になんと侮辱されようと握り締めた拳を開いて耐えたんです。
そして「俺はビデオショップですらまともに働けないのか」と自分を責め、悔しくてトイレで泣いたと。
そんな、当たり前が当たり前ではない生活が何年も続き、ようやく社会に戻ってこれた友達。
昔乗ってたフルスモークのいかつい高級車を売り払い、最近新しいチャリを買ったらしく、「俺にはこれが一番合ってるわ」と笑いながら言ってました。
生まれ変わったような友達と久々に話して、言いたい事は山程あるけど、
とにかく生きて元気でいてくれただけで良かったです。
元気やからこそ、また昔みたいに一緒に酒飲みながらくだらん事言って笑い合える。
それだけで充分やし、それ以上の最高はありません。
今度友達と会った時は、この5年間の事を散々いじってやろうと思います。
殴られない程度に。